Dec 23, 2009

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 巨人が大慌てである。2年続けて優勝を逃しただけでなく、観客動員でも減少、ドラフトでは本命を指名できず、という由々しき状態。

 真っ青になったフロントは野村ID野球にチーム建て直しを求める策に出た。

■張本、落合、清原、そしてラミレス…伝統の「大物外様切り」

 優勝を逃したときの巨人は大胆な動きに出る。今年の場合、最初に手を付けたのが大物の放出。アレックス・ラミレス外野手がその標的で、ヤクルトとのクライマックスシリーズ・ファーストステージで負けた(10月31日)途端、来季の契約を結ばないことが判明した。球団が起用を制限する、との意思を示したのに対し、ラミレスは、2000安打達成(あと150本)には常時出場、との考えが固く、それで決裂したという。ラミレスが拒否して退団することを見込んでの条件提示だったことは明らかである。

 巨人はこれまで、外様の大物選手に対しては、賞味期限がくると、すっぱり切ってきた。最近では清原和博内野手がそうだった。ホテルに呼び出し、即座に「来年は戦力と考えていない」と縁切り通告している。その後、オリックスへ。現中日の落合博満監督も同じで日本ハムへ放出された。古くは張本勲外野手。3000安打を目前にしながらロッテに出された。

 そして優勝のためには大金を惜しげもなくつぎ込んで他球団の主力を獲得する。それで優勝を手にするという大リーグのヤンキースが得意とする「小切手野球」だ。実は、このような戦力補強作戦が思わぬ弊害を生んでいる。自前の若い選手の夢と希望を打ち砕くからだ。ある二軍コーチ経験者はかつて「一軍で活躍できるところまで育ったところで大物選手を取ってくるから、その選手の働き場がなく、間もなく旬が過ぎてしまう」と語っていた。

■ライバルの「頭脳」を入閣させるサプライズ人事

 そんな大物打者が少なくなっているのが現状。そこで巨人が考えついたのが、野村克也氏が提唱したID野球の導入だった。巨人−野村のこれまでのいきさつを思うと、これは近年にないサプライズである。ID(インポータント・データ)とは「データ重視」の意味だ。野村が南海監督時代にドン・ブレーザーという元大リーガーから伝授された「考える野球」の焼き直しといっていい。

 来季のコーチ陣編成で「戦略コーチ」というポジションを設け、橋上秀樹元楽天ヘッドコーチが就任。またバッテリーコーチに秦真司氏が就いた。思わず「フー?」と巨人ファンが頭をかしげるような知名度である。この二人、巨人とは縁もゆかりもない。両コーチがヤクルト時代に、野村元監督からID野球を学んだことに目をつけた。巨人OBたちから「えーっ?」との声が上がったサプライズ人事だった。優秀なOBなどそっちのけだった。

 「野球は頭を使うスポーツ。考える野球がすべて。ミーティング改革をする。それも私の仕事」と橋上新コーチ。師匠野村とそっくりの言いようだった。つまり原巨人は頭を使っていなかったというわけである。巨人フロントが原監督の手腕に疑問と不安を持っている証といえよう。

 巨人は長嶋茂雄監督時代、野村監督のヤクルトとライバル関係にあった。「長嶋カンピューター野球」VS「野村ID野球}の図式は大いに盛り上がった。そのライバルの野球を取り入れることになったわけで、勝つためにはなりふり構わない巨人の切羽詰まった状況が表れている。

 巨人は早くから近代野球の教科書となったドジャース戦法を取り入れた。それが9連覇という結果を残し、巨人から各球団にその野球が伝えられ、今日の日本のプロ野球がある。ID野球もその上に成り立っている。巨人のフロントはそういう歴史を知らないのだろうか。

 そして気になることがある。原監督の父、原貢氏は高校野球や大学の監督として優勝の実績を持つ。大胆な戦いを得意とする「勝負師」で、定石を無視することもある長嶋野球に似ている。これまで監督である息子にアドバイスを続けてきたといわれる存在だ。そうなると、来年は「原パパ」VS「陰の野村」となる可能性が大。エラいことである。

 ただ、ID野球はチームに浸透するには時間がかかる。即時ペナント奪回を目論む巨人が期待する即効薬となるかどうか。その処方で原監督が頭痛を訴えなければいいが…。原監督にとって来年は勝負の年になる。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)

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